Column201305 of 川本法務事務所

憲法記念日に寄せて 〜憲法改正への意見〜

2013-5-3

憲法記念日に寄せて 〜憲法改正への意見〜

5月3日は憲法記念日です。現在の日本国憲法が施行されたのを記念してできた祝日ですが、世の中の多くの方にとってはGWの中の一日くらいの感覚でしょうか。私も普段はあまり意識しません。
この憲法ですが、最近ではやたら改憲の話がいろいろなところで言われるようになり、次の参議院選挙では一つの争点にすらなると言われています。
せっかくの憲法記念日なので、ここでこんな憲法の改正について少し考えてみようと思います。

今回の改憲については、憲法96条の改正がターゲットになっています。
憲法96条というのは、憲法改正の手続きですが、現状の条文は各議員の総議員の3分の2以上の賛成によって憲法改正を発議し、国民投票によって過半数の賛成が得られたら憲法を改正することができるという趣旨のことが書かれています。
今回の改正の中で、国会による発議を総議員の3分の2から2分の1に要件を緩和しようという話が出ているわけです。

さて、ここで、皆さんは憲法を改正することに賛成ですか?それとも反対ですか?
というと、皆さんが真っ先に思い浮かべるのは憲法9条ではないかと思います。日本の憲法改正の議論というのは常に9条を中心に語られ、9条以外の改正の話というのはほとんど人の耳に入って来ませんでした。
私個人として、憲法はそろそろ部分部分修正が必要な時期だと思います。
戦後想定されていたのとは全く状況が変わる中で、新しい人権の議論なども多数出ています。こんな中で、憲法の規定を60年以上変えないでいる必要も特にないのかなぁということから考えても、憲法は部分修正は必要でしょう。
何も9条だけを考える必要もないと思うのです。

では、今回の96条の改正についてはどうなのでしょうか?
多分、現在の政権は、この条項があるから、憲法が変えられないのだと思っているのでしょうし、だからこそ憲法改正手続きをもう少し緩やかにしようという発想で、この96条をターゲットにしているのだと思います。
しかし、私は、憲法を変えたいのであれば、本来変えたいところを変更する議論をするべきなのだと思います。改正手続きを変更するなどというのは、いわば搦手から城を攻めるようなものであり、国の基本法を変える作業としてはいかがなものかと思わざるを得ません。
そもそも、国会で3分の2を握るのが不可能だということを政治家達は考えているからこそ、こういった議論になるのでしょうが、これに対する解決策を、憲法改正手続きを改正するという部分でアウトプットする必要はないと思います。
3分の2を握れないという理由は、私は政党と政党が持つ党議拘束というものにあると思っています。党議拘束がなければ、野党の中にもその時点の政権に賛成の人も出てくるかもしれませんし、その結果として3分の2という数が集まる可能性もあると思います。
国会議員は「全国民の代表」と憲法で位置づけられている以上、政党の代表として機能してはならないわけであって、そういった観点から考えても、せめて憲法改正の発議の場面くらい、党議拘束に捉われないというような運用でまずは憲法改正が可能かどうかを探ってみる方が優先されるべきなのではないかと感じます。

高名な憲法学者の芦部信喜先生は、その著書の中で「憲法には、高度の安定性が求められるが、反面において・・・可変性も不可欠である。この安定性と可変性という相互に矛盾する要請に応えるために考案されたのが、硬性憲法の技術・・・である。」と述べられています。
仮に、総議員の3分の2の要件を緩和すると、硬性憲法ではなくなってしまう可能性もあり、こういった点も考えながら、憲法改正の議論をもう少し見守ってみたいと思う5月3日でした。

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